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3Dプリンタのノズル交換時期に関する持論

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3Dプリンタのノズル交換時期に関する持論

この記事は、3Dプリンタのノズルって消耗するって聞いたんだけど交換のタイミングはいつだろう、と思っているすべての3Dプリンタユーザーに向けて、経験値から持論を伝える目的で書いております。

まず結論を置いておきます。

時間や、フィラメントの本数(重量)など、数値的に「ここで変えるべきだ」というノズル交換時期の明確な指標はありません。

そういう考えに至っている理由として、いくつか示していきます。

理由として3つあります。

1.機種の種類が多い

まず、3Dプリンタという機械は、様々なブランドが立ち上がっており、様々な機種が出回っています。僕のところに数ヶ月に1回くらいのペースで「日本で売りたいからパートナーにならないかYou」とDMが来るくらい、まだまだ新規メーカーさん立ち上がってます。

これはつまり、3Dプリンタユーザーが疑問に思う「僕の3Dプリンタのノズルの消耗ペースは?」の前提条件、3Dプリンタ本体の種類が多すぎる、ということを意味します。

僕は今まで、2つのメーカーを重点的に使用してきました。

atom(旧Genkei、現マグナレクタ)

ステンレスバレルを独自加工したノズルでした。2014年7月から2018年8月まで主力機種だったのですが、一度もノズル交換したことがありません。

ただ、2017年にはエクストルーダーをE3DのTitanに乗り換えてV6ホットエンドを使うようになっていたため、2年位は持った、と言えるのではないでしょうか。この頃はすでにヨーヨー制作スキルに一定の目処がついていたり、キャンディーダイスなどのサイドグッズ生産にも乗り出していたころなのですが、現在のプリント環境との単純比較は難しいと思っています。

MK3S+(Prusa)

2018年秋の購入以来、いま所持している4台トータルでおそらく100個くらいはノズル交換している機種です。真鍮のノズルはすぐ使えなくなる印象を持っていたので、E3Dのハードノズルを愛用していました。ハードノズルは、以前の配信で、半年間くらいは持つ、と言っていましたが、その感覚は今でも変わらないです。

Leee(BirthT)

これからメインに加えていく機体として、ベルト式3Dプリンタがあります。ノズルが45度の角度を持ってプリントしていくので、ノズルの消耗がどうなるのか、イメージが、記事執筆時点でまったく掴めていません。

 

ほかにも、Geeetechのi3(アクリル組み立て式)とロストック(組み立て式のデルタタイプ)、M3Dのマイクロ(初心者には地雷機種です)と触って来ました。これらの機種でも、ノズルを温めて溶かしたフィラメントを押し出す、という構造そのものに変わりはありませんが、僕には、M3DのマイクロとPrusaMk3Sの本体や得られる結果を比べて、FDMとして同じ3Dプリンタだ、と言うことができません。

出来上がるオブジェクトのクオリティに差がありすぎます。

以前の配信で、テクダイヤの小山さんがノズルを自動車のタイヤに例えていました。それで言うと、この項目で伝えたいのは「自動車の種類が山程ある状態だ」ということです。

ガソリンを燃やしてエンジンを回す、という車が走る構造そのものに変わりはないが種類が有りすぎる、と言えます。

自動車であれば、駆動方式いろいろありますよね。多くの国産車のようなFF、BMWのようなFR、スポーツカーに見られるミッドシップエンジンなど、その走り方が違えば、タイヤの消耗の仕方も異なるだろう、という想像はできるでしょう。

※頭文字D、MFゴーストを読むと、そういう表現がいっぱい出てくるので、このあたりのことをイメージしたい方はぜひ一度お読みいただけると良いかと思います。

こうなってくると、ボーデン式とダイレクト式は同じ3Dプリンタと言えるのか、ということにもなってきます。Prusaで言えば、MINI+とMK3S+では、自動車で言う「駆動方式」が異なるわけですよね。影響がない、考慮しなくていいとは言い切れないわけです。

2.ノズルの種類が多い

ノズルについて、いつ交換するのか疑問の出発点は、真鍮ノズルを使っていること。

材料起因であろうと思います。

僕は工業系の勉強をしてきたわけではないので、物性など数式での表現はできないのですが、真鍮は目の荒い金属ヤスリを当てるとサクサクと削れてしまいますよね。真鍮は決して、摩擦に弱いとされている素材ではないように思うのですが、3Dプリンタの部品として使われる環境においては他の素材にくらべて弱いということになるのでしょう。

僕は前述のatomで、ノズル交換の必要性を感じたことがあまりありません。なんなら、なんかきれいに出ないからノズルを交換しよう!ってなったことありません。穴径は0.4mmと、0.5mmにドリルを使って自分で拡張したものを持って使いわけており、ウッドフィラメントは0.5mmを使うようにしていましたが、ダイレクトドライブ式に改造してからはぜんぶ0.4mmで問題なくなりました。

ノズルを交換しないと、ってなったのは、E3Dのホットエンドに乗り換えてからになります。

E3DのV5あたり(2015年前半)からV6(2016年頃)への進化で急速に広まった、先端を簡単に交換できるノズル方式というのは画期的だったと思います。

自分の記憶では、2014年にはV4があってすでにノズル交換可能な構造を持っていたはず。この頃は、ホットエンド部分にカプトンテープを巻いたり、断熱ができるものを巻いたり、いかにホットエンド先端の温度を維持するかに工夫が凝らされていたころだと思います。

V6で確立した、ヒートシンク、バレル、ヒートブロック、ノズルの4つの金属部品からなるこのホットエンド構造は、一部自社ルール品採用以外の、ほとんどの3Dプリンタで採用されています。最新になったRevoタイプでも基本的な発想は変わっていません、バレルがオミットされたくらいでしょうか。

生態系として、このような便利なホットエンド構造が3Dプリンタに載って広まるにつれて(E3Dは、設計図などすべてのドキュメントを公開)、他のホットエンドが駆逐されていきました。この環境に合わせて、さらなるサードパーティーからノズルやバレルの製品が出回るようになっているのは周知のとおりです。

その中で、素材、内部構造が異なるノズルも、たくさん出回っているわけです。

自分が使っているプリンタに搭載されている真鍮のノズルが、どこでどう作られたノズルなのかすら、もうわからない状況だと思います。

再度タイヤに例えるのであれば、タイヤの素材、経、溝の作りなどが異なる、ということになります。そうなってくると、一概に、何キロ走ったから交換時期です、と言えるのかどうかという課題が出てくるわけです。タイヤは一般論として、何キロ走ったら交換の目安ですと言われてますが安全面への配慮もあり、これは確約された数値ではないように感じます。

自動車のタイヤは整備士さんやユーザーが目視で溝の減り具合を見て客観的に判断できるような大きさですが、3Dプリンタのノズルは小さすぎでしょう。しかも多くの場合、フィラメントがまとわりついて汚れておりノズル本体はよく観察できない、と思います(笑)。

3.ユーザーによって得たい結果が異なる

3Dプリンタ選びにおいて、最もユーザーが重要視する割に結果、軽視されてるのが、その3Dプリンタによって得たいものは何なのか、という問いがあります。

3Dプリンタユーザーは主に2種類いると思っています。

A.加工機械を使っているという意識で運用している人

B.3Dプリンタという機械をいじくりまわしたい人

3Dプリンタ沼にはまり込む人はだいたいこの両方を併発しているものですが、どっちに寄っているかの濃淡はそれぞれでしょう。

自分の作りたいものが明確で、手段として使っている人はA寄りです。いかにゴーストを消すかだったりひたすらパラメータなどのセッテイングを追いかけたり、あの部品この部品と気になったり、目的として使っている人はB寄りです。

この違いは最終的に、3Dプリンタの稼働時間、使用するフィラメント、作りがちなプリントオブジェクト、得意とするスライスの形状などに現れてきます。

これも自動車に例えれば、サンデードライバーお父さんの買い物コースなのか、週末長距離ドライブコースなのか、業務運転貨物コースなのか、負けられない鈴鹿サーキットでのレースなのか異なる、結果、ドライバーとしてのスキルや見識も異なってくる、ということが言えます。

この一番のレースで負けられない!っていうときには、ドライバーやチームはタイヤというよりは自動車全体のコンディションに気を使うでしょう。3Dプリンタで言えば、ノズルはいち部品に過ぎず、躯体の剛性や部品の精度、ファームウェアの安定性、スライサーの使いやすさなど、気にする部分はもっとたくさんあります。

一方、電車網の発達してる都市部に住んでいると、自動車を持っていてもほとんど乗らない、ということが有りえます。週に1回、近くへ買い物、往復で50キロ程度、であれば、とりあえず見た目がかっこいい、走れるように車検が通れば良い、たくさん荷物が乗れば良いなど、求める要素も変わってきます。

このように意識も頻度も異なる両者が、同じノズルをヨーイドンで使いはじめて「数値化された時間」や「数値化されたフィラメントの量」でノズル交換するものでしょうか。「レーサー」は24時間で使い切ってノズル交換するかもしれませんが、「サンデードライバー」は365日(195240時間)でまだ使えるけど交換しようかなー、という違いがあるかもしれないですよね。

 

以上の3点から、ノズル交換時期の判別方法は「これだ」とは言い切れない、という結論になります。

ただ、下記は、誰かやって欲しい、と思います。

交換時期目安の確認方法の提案

下記条件で比較を行って、ノズル先端付近の写真と、プリントにかかった時間の総計のデータを取ることで「この環境下ではこうでした」ということが言えるようになるかと思います。

プリンタ本体

・PrusaMK3S+(ダイレクトドライブ方式の代表)

・PrusaMINI+(ボーデン方式の代表)

ノズル

一定のメーカーの同じノズルを4つ用意し、それぞれに2本ずつ使います。

データ

何でも良いのですが、ひとつのデータを決めて、わかりやすいものが良いかと思います。

フィラメント

・一定のメーカー製のPLAを6kg

・一定のメーカーの摩耗性のPLAを6kg

1本のノズルに対して3kgずつ付加をかけるイメージです。フィラメントを使い切った時点でノズルを外して清掃し、先端の消耗具合を比較します。

フィラメントメーカーは突然なくなったり、手配できなくなったりするので、そこそこ信頼性の高いメーカーのフィラメントを手配する必要はあると思います。

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自分で書いてきて、提案するくらいなら自分でやれや、っていうところなわけですが、自分でやるには3Dプリンタを開けてこの実験のためにコストかけないと、という感じなので、提案するだけしていったん寝かしておきます。

とはいえ、消耗実験用の項目、Amazonの欲しい物リストとして作成しました。ノズルとフィラメントの費用をサポートしていただけるのであれば責任持って僕やります(笑)

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  • この記事を書いた人

東方ヒデキ

3Dプリンターで競技ヨーヨーを作り続けて6年の職人です。3Dプリンターを自由に心置きなく楽しく使える人を増やしたいので、YouTubeとメルマガで実体験に基づく3Dプリンターの運用ハウツーをお伝えしてます。

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